モビリティの進化が未来を変える

物流のエキスパートを招いた日野自動車のDX…日野自動車 CDO デジタル領域長 小佐野豪績氏[インタビュー]

日野自動車は、100年に一度と言われる変革期に、「外部の血」が必要と、大手物流企業からエキスパートを招聘し、DX改革に取り組んでいる。改革の一翼を担うのは日野自動車 Chief Digital Officer(CDO)小佐野豪績氏だ。

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物流のエキスパートを招いた日野自動車のDX…日野自動車 CDO デジタル領域長 小佐野豪績氏[インタビュー]
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DX(Digital Transformation)とは、単に業務をIT化することではない。クラウドやデジタルの世界との連携、デジタルツインやサイバーフィジカルと呼ばれる、リアル社会とデジタルを融合させた経営戦略の実践、および業務プロセスの変革を意味する。車両の電子化・ソフトウェア制御化は進んでいるが、DXの取組みはまだまだ始まったばかりだ。

日野自動車は、100年に一度と言われる自動車業界の大変革期に、「外部の血」が必要と、大手物流企業からエキスパートを招聘し、DX改革に取組んでいる。改革の一翼を担うのは日野自動車 Chief Digital Officer(CDO)デジタル領域長の小佐野豪績氏だ。

小佐野氏は、3月29日開催のオンラインセミナー「サプライチェーンからサプライウェブへ~物流・商流の未来~」に登壇し、日野自動車のDXとトラック中心の輸送の革新をどう進めるのかについて講演する。

---:さっそくですが、日野自動車が取組むDX戦略で、小佐野氏の役割、目指していることはどんなことでしょうか。

小佐野氏(以下同):日野自動車は2018年10月に経営戦略「Challenge 2025」を発表しました。そこでは、「もっと、はたらくトラック・バス」というスローガンのもと、安全・環境問題やドライバー不足といった、日野が解決すべきさまざまな社会課題に対し、日野がどのような方向性で取り組んでいくのかを掲げています。その中で、デジタルやビッグデータの活用、DX戦略は欠かせない要素のひとつに位置づけられています。これを実現するためのキーワードは、デジタルを介した社会やユーザーとのつながりだと思っています。

技術的な側面から見ると、車両や輸送にかかわる情報、ビッグデータを通じた社会や人々とのつながりを、安全、環境、物流の効率化に結びつけることです。モノづくりや技術革新に加え、DXが今後の日野自動車の戦略の要なのです。

日野自動車には、社内向けシステム開発、ITセキュリティ、ITインフラを担当する部門がありましたが、これらはいわば守りのDXであり、顧客や外部に向けた連携基盤やスマートフォンプラットフォームの構築、DX人材育成などを担う「攻めのDX」を担う部隊がありませんでした。

そこで、2019年に攻めのDXを推進するDX推進部を設置しました。2021年から私はChief Digital Officerとして日野のデジタル領域全般を統括する役割を担っています。

---:DX戦略の推進に、たとえばどんな取組みがあるのでしょうか。

ロジスティックスや物流現場の課題解決として、スマートフォンアプリなどの活用を進めています。商用車は消費財ではなく生産財です。商用車メーカーの直接の顧客はバス・トラック事業者ですが、その先のバス利用者や荷主も顧客として考える必要があります。最終的にはすべての荷物は個人に行きつきますので、そこまで含めて、市場・現場のニーズ、お客様の声に耳を傾ける必要があります。

車両から得られるビッグデータを活用し、自社でのソリューション開発(ソリューションプロバイダ)と並行し、データプロバイダ として外部企業との連携、ソリューション提供を加速していく必要があります。人材含めてリソースを作っていく、時間もお金もかかる部分です。しっかりやっていく必要がありますが、同時に日野は後発であるがゆえのリープフロッグを目指します。多くの新興国が先進国の技術進化の歩みを一気に飛び越えるように、既存陣営のしがらみなどなく最新テクノロジーのメリットを最大限活かしたいと思っています。

幸い車両からデータを取得することができるので、アプリやサービス市場の知見やアイデアのある企業、サードパーティ、スタートアップとのアライアンス、協業により取り組みを加速し、お客様に多くのソリューションを短期間で提供していきます。

---:Hacobuとのパートナーシップがその事例ということですね。

はい。物流の課題はドライバー不足だけではありません。たとえば、物流倉庫や納品先の待機車両、駐車車両の問題。私は物流業界でまさにこれらを受け入れる側にいました。荷主は、通常、着車バースへの到着時間を指定します。遅延すると荷物がおろせないこともあるので、対策として、運送会社は1時間前など早めに現場に着いて周辺で時間調整をするのです。

実は、受け入れ側としては到着時間がわかれば、厳密な時間指定をしないでもいいのです。動的な運行管理で、リアルタイムに情報が更新され、いまどのあたりにいるかわかれば運行管制ができます。Hacobuのシステムはこのような課題のソリューションのひとつになるものと思っています。

---:今後の展開はどのように考えていますか。

しばらくは、アライアンスや協業が戦略のメインですが、自社ソリューションや新しいビジネスプロセスの開発もつづけていきます。マネタイズも同時に考えていく必要があります。

アプリやサービスについては、毎月なんらかのアップデートやリリースを行うアジャイル開発で進めていきます。アジャイルとは、完成品のゴールを設定せず、結果を評価しながら改善をしていく考え方です。自動車の開発・製造ではなじみのない手法かもしれませんが、アプリ・サービスでは一般的な手法です。

DX推進部のスタッフも様々な部門から社内公募で集まった精鋭です。企業としては、DX先進企業とは言えないかもしれませんが、意欲と能力を持った人が集まりました。大変だとは思いますが、役者は揃っているのでデータを介してお客様・社会と繋がり、顧客視点のDXを推進していきたいと思います。

小佐野氏は、3月29日開催のオンラインセミナー「サプライチェーンからサプライウェブへ~物流・商流の未来~」に登壇し、日野自動車のDXとトラック中心の輸送の革新をどう進めるのかについて講演する。
《中尾真二》

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