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ダイナミックプライシングでスポーツはどう変わる?…千葉ジェッツふなばし 濱雄介氏、ダイナミックプラス 代表取締役社長 平田英人氏[インタビュー]

データ分析による需要に合わせて、リアルタイムで価格を変えるダイナミックプライシング。これまでもエアラインやホテルで採用されてきたが、近年、国内でもスポーツチケットやライブイベントチケットなどに導入が進んでいる。

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ダイナミックプライシングでスポーツはどう変わる?…千葉ジェッツふなばし 濱雄介氏、ダイナミックプラス 代表取締役社長 平田英人氏[インタビュー]
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データ分析による需要に合わせて、リアルタイムで価格を変えるダイナミックプライシング。これまでもエアラインやホテルで採用されてきたが、近年、国内でもスポーツチケットやライブイベントチケットなどに導入が進んでいる。

B.LEAGUE(以後、Bリーグ)所属のプロバスケットボールチームであり、2020年からダイナミックプライシングを導入した千葉ジェッツふなばしを運営する株式会社千葉ジェッツふなばし マーケティング本部 チケット・セールス企画チームの濱雄介氏と、ダイナミックプライシングシステムを提供するダイナミックプラス株式会社 代表取締役社長の平田英人氏に、導入の背景や導入後の状況について聞いた。

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チケット単価がBリーグ内で下から3番目

---:導入の経緯について

濱氏:ダイナミックプライシング導入以前は、チケットは年間を通して全試合一つの価格表で販売していました。ホームゲームの多くを行う船橋アリーナは5千人を収容でき、ほぼ毎試合で満員となっていましたが、チケット単価はBリーグで共通利用している販売システムのデータでBリーグの1部にあたるB1所属の18チームのうち下から3番目という状況でした。高価格のコートサイド席の多くがシーズンシートで販売済のため考慮されていないこと、低価格の2階席もしっかり販売できていたので平均単価が低くなってしまうことを考慮しても、チケット収益を伸ばしていくには価格設定や販売方法見直しの必要性を感じ、スポーツやイベントにおけるダイナミックプライシングに関するトップランナーであるダイナミックプラス様にご相談しました。

平田氏:当社としては2013年より構想を練り、創業前には実証実験もおこないました。スポーツチケットにおいては、本当に日本のスポーツファンに浸透できるのか、事業主にとって価格を変えることが収益化につながるのか、欧米並みのアルゴリズムを作れるのかという3点を実証実験で確認し、転売の減少も立証できました。

今回の導入においては、導入フェーズでは、欧米で実績があるアルゴリズムを用いて始めたのでスムーズでしたが、運用フェーズでは苦労しました。特に今シーズンはコロナ対策として入場制限をかけながらの運営になるので、千葉ジェッツふなばし様と何度も相談を重ね、改善をおこなっています。

チケット単価は改善。一方で、ファンの理解を得るための努力も必要

---:導入後の変化や反響はいかがでしたか?

濱氏:ダイナミックプライシングの導入後、チケット単価はB1のなかでも上位になりました。また、導入以前は、チケット販売後に即完売する状況が続いており、常に販売日をチェックしているような熱量が高いブースター(Bリーグファンの呼称)以外が興味を持ったタイミングで購入できないという課題がありました。ですが導入後は、ダイナミックプライシングで価格が変わることで様子見をする方もいらっしゃり、即完売することが少なくなった結果、何かのきっかけで興味を持っていただいたお客さまにチケットを提供できる環境が作れています。我々としては数年後、約1万人収容可能なアリーナを本拠地とする計画があり、「千葉ジェッツの試合を観たことがある」という層を増やしていくことが急務なので、この結果には価値を感じています。

平田氏:即完売=人気と捉えられがちですが、ダイナミックプライシングの観点では機会損失と考えます。チケット販売後から試合当日までブッキングカーブが上昇し続けることが理想的で、即完売してしまうと試合当日まで利益を生み出せません。販売される状態が続くようになって、新たに興味を抱いていただけるお客様がチケットを購入し、アリーナを訪れる機会ができるといった、ダイナミックプライシングの本質的な価値が提供できて非常に良かったです。

濱氏:一方でブースターからのネガティブな反応もあります。その反応は大きく分けると二つに分類されるのですが、まず一つはダイナミックプライシング=チケット単価の値上げのためだけの道具と捉えられていること。もう一つは制度自体が「よくわからない」というものです。

今季、収容数が限られていることもあり、供給が少ない中でこれまでと比べて単価が上昇したことは事実です。ただし、本来は価格帯に幅を持たせてお客さまに選択していただくためのものです。後者の「よくわからない」はある程度時間をかけていかないと理解いただけない部分もあると思うのですが、当クラブではチケット用に新たにTwitterアカウントを開設して毎日発信するなどして仕組みそのものの啓蒙に努めています。

いずれにしてもお客さまからご理解を得ていくことが重要なので、自分たちだけでできる範囲で販売方法や発信は改善していくことを意識しています。

平田:ダイナミックプライシングという文化が浸透していないため、ネガティブな反応はあって自然だと考えます。ダイナミックプライシングは濱さんが言っているように、これまでの単一的なチケットの価格が価格帯の幅が広がることにより、お客さまにとって「価格の選択肢」を広げるものです。当社で初めてダイナミックプライシングを導入していただいた某プロスポーツクラブでも、導入当初は、ファンからネガティブな反応がありましたが、同社によるファンへの継続した情報発信や説明を行った結果、ネガティブな反応は減り、ポジティブな反応が確実に増えてきています。

ダイナミックプライシングで価格や体験の幅を広げる

---:今後の展望について

濱氏:「需給に応じて価格が変わる」という考え方は、基本的には社会に受け入れられるものだと思っていますので、今後、スポーツ界でもダイナミックプライシングは広がっていくと考えています。導入がゴールではなく、目標にしている1万人アリーナを常に満員にしていく体制を築くうえで、ダイナミックプライシングは重要な武器の一つです。

平田氏:「ビックデータ×価格」であらゆる価格の選択を広げていく手段をつくるのが、ダイナミックプラスが提供するサービスの価値です。スポーツでは特に、ファンごとにスポーツに求めるものが違うので、価格や体験の選択肢が増えることはファンにとっても、また事業主にとっても、更に転売が生まれない社会にとっても良い、「三方よし」の状態につながると考えていますし、千葉ジェッツふなばし様の1万人アリーナを常に満員にしていく体制構築の一助になればと思っています。

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《mirai.Response編集部》

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