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【ゼロカーボン特集】これまでやってきた技術のいいとこ取りを…シェフラージャパン 田中昌一代表取締役 マネージング・ディレクター

各国政府が2050年のカーボンニュートラル社会の実現へ向けた方針を打ち出した。完成車メーカー各社も独自の目標を掲げて取り組みを進める中、サプライヤーに求めるCO2排出量の削減目標もより厳しくなってきている。

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シェフラージャパン 田中昌一代表取締役 マネージング・ディレクター
  • シェフラージャパン 田中昌一代表取締役 マネージング・ディレクター
  • シェフラージャパン 田中昌一代表取締役 マネージング・ディレクター
  • 9月6日には自動運転分野でモービルアイとの協業も発表した。
  • エンジン、トランスミッション、シャシー向けなど幅広い自動車部品を展開
  • エンジン、トランスミッション、シャシー向けなど幅広い自動車部品を展開
  • エンジン、トランスミッション、シャシー向けなど幅広い自動車部品を展開
各国政府が2050年のカーボンニュートラル社会の実現へ向けた方針を打ち出した。完成車メーカー各社も独自の目標を掲げて取り組みを進める中、サプライヤーに求めるCO2排出量の削減目標もより厳しくなってきている。

これに対して、各企業はどのように対応していくのか。今回は、独・シェフラーグループの日本法人シェフラージャパンの田中昌一代表取締役 マネージング・ディレクターにお話を伺った。

◆シェフラー製品の強みとは

---:シェフラージャパンは、どのような会社でしょうか?

田中昌一氏(以下敬称略):シェフラーグループ(Schaeffler AG)は2015年に株式上場するまでファミリー企業として運営されてきましたので、一般的な上場企業とは雰囲気がやや異なると思います。ゲオルク・シェフラーが、戦後にドイツで創業しました。戦後のドイツは金属製品の加工が許されなかったため、物を運ぶため木のトロッコを作ったことがはじまりです。そのような「社会への貢献」という思想は、日本法人も同様に持ち合わせています。

今日のシェフラーのビジネスを築く決め手となったのは、ニードルベアリング(球の代わりに針=ニードル状のローラーを組み込んだベアリング)の発明でした。ボールベアリングに比べ、外径が小さく、全体を低くでき、それでいて同じ負荷を受けることができます。たとえば余分な空間の少ない変速機で活きました。

欧州では永年にわたりマニュアルトランスミッションが主流でしたので、これらベアリング技術で業績を伸ばしました。クラッチも、滑らかにつながる振動対策などの技術が評価され、これが今日のハイブリッド車(HV)にも応用されています。

また、クラッチ製造で培った厚手の金属をスタンピング(型押し)で作る技術を基本に、エンジンのバルブタペットを精度よくつくる技術を磨き、現在もそれがシェフラー製品の強みとなっています。機械技術にとどまらず、ベアリングの表面処理など化学分野に専用部署があり、自動車だけでなく産業機械の分野へも進出しています。特許の取得を含め、新しい技術分野の開拓も行うテクノロジーカンパニーです。

---:日本法人の役目とは?

田中:シェフラージャパンは外資系企業ですが、これまで磨いてきた技術が日本でも認められ、多くの製品を国内自動車メーカーに納品してきました。たとえば、バルブトレーンや、ベルト式のスタート・ストップ機構、CVT(無段変速機)のチェーンなどをご利用いただいています。

日本の自動車メーカーはグローバルに展開し、海外の生産工場もありますが、基になる仕様の確定や、生産を含めた設計は、日本で行われることが多いため、弊社の技術をまずは客先の本社へ紹介すること、また国内での開発を支援することが弊社の役目です。単に部品をお使いいただくため購買へ伺うのではなく、技術担当者にも営業に伺います。ですから、弊社の営業担当者は技術に詳しくなければなりません。

日本の自動車メーカーは、世界の約3割の市場占有率ですので、ドイツでも日本での成果に期待しており、技術のわかる、また英語でドイツへ報告できる人材を育成することも、日本法人の大きな務めです。

◆カーボンニュートラルへ、既存技術を活用し新たな製品展開を目指す

エンジン、トランスミッション、シャシー向けなど幅広い自動車部品を展開---:カーボン・ニュートラルに向けて、どのような製品を提案していきますか?

田中:製品では、回転する部分には軸受けが必要で、抵抗を減らし効率を高めることが二酸化炭素削減につながります。たとえばベアリングの種類、大きさ、表面処理などについてコンピュータでシミュレーションできる技術を持っていますので、設計段階から数値や最適な情報の提供ができ、自動車メーカーから喜ばれています。

摩擦損失の低減では、バルブタペットの表面処理や、ローラーロッカーなどにより効率を高めることができ、電動カム駆動によってアトキンソンサイクルに応答性よく適応します。デュアルクラッチ式の自動変速機(DCT)も、素早い変速で効率のよい動力伝達と滑らかで快適な加減速を実現します。トルク伝達や摩擦損失の低減は、弊社の得意とする分野です。

電動化分野としては、歯車(ギア)の摩擦損失に関する製品を提案しています。電気自動車には変速機はありませんが、減速機はあります。この最終減速比のギアの摩擦損失をいかに減らすかという点で、傘歯車ではなく平歯車を使う同軸の遊星歯車を提案しています。

これにより、ハイブリッド車(HV)を含めた電動化で、パワーユニットの高さを抑えることができ、またドライブシャフトを両側へ出せることにより4輪駆動(4WD)にも適しています。

このほか、自動車分野以外でも、産業機械分野(インダストリー4.0)で機械や生産設備の異常震動等をセンサーで認識し、壊れる兆候を事前につかむことにより、従来の定期点検で機械を止めたり、まだ使えるかもしれない部品を交換したりといったダウンタイムを省き、必要な部分だけ交換する新たな手法を採り入れています。

異常と判定する兆候の判断は、潤滑や変形などによる振動の変化を人工知能で判定し、送信するといった、これまでの知見が大いに役立っています。既存の製品への後付けも可能です。ドイツでは導入がはじまっており、日本でも積極的な売り込みをしていくつもりです。

---:事業を運営するうえでのカーボン・ニュートラルはいかがでしょう?

田中:ドイツでは、グリーンエネルギーの電力を積極的に採用しています。アジア地域でも、太陽光発電を採り入れるなど、2024年までの二酸化炭素削減目標を設けていす。そのほか、再利用を含め、水をどのように使っていくか。輸送網でいかに二酸化炭素排出量を削減するか。また、弊社は鉄を大量に使うので、鉄鋼会社へも基準を設けて協力をお願いしています。

最近では、SDGs(持続可能な開発目標)の達成度合いが賞与における業績の評定にも反映される部分があります業務を遂行する上で社員の意識を高め、企業としてのカーボン・ニュートラルやSDGsへの貢献を促す狙いがあります。

日本法人の事業所は、賃貸物件ですので、カーボン・ニュートラルの取り組みは容易ではありません。それでも、コロナ感染拡大を契機に殆どの部門がテレワーク環境へと移行したため、使用しないフロアの空調を使わない、電灯をLEDに切り替えることにより節電するなど小さなことでもできることから進めています。

◆EVにも、HV用のエンジンにも適応できる能力を持っている

9月6日には自動運転分野でモービルアイとの協業も発表した。---:10年後には自動車業界が様変わりしそうですが。

田中:最終的に状況を決めるのは消費者ですから、どのように受け止められるかによって達成状況は左右されるでしょう。すべての車がEVにはならないかもしれません。EVは増えても、HVとしてエンジンの可能性は残るのではないか。そのとき、弊社の技術はEVにも、HV用のエンジンにも適応できる能力を持ちます。内燃機関エンジンが電動化していくことへの不安の声もありますが、私は、まだまだ、内燃機関技術の発展には可能性があると考えています。

---:改めて、将来へ向けた手ごたえはいかがでしょう?

田中:HV用のエンジンについては、弊社がこれまでやってきた技術のいいとこ取りができると考えています。摩擦損失の低減や、効率の向上などで、さらに弊社の存在が認められていくのではないでしょうか。EV分野も含め、シェフラーとしては、将来も技術的な解をお客様と共に作り出し続けていきたいと考えています。
《御堀直嗣》

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