モビリティの進化が未来を変える

ラストマイルをゼロエミッション化する…イケア・ジャパンが eキャンター を導入

三菱ふそうトラック・バス(MFTB)は15日、「eキャンター」の納入が全世界で300台に達したとして「サステナブル・モビリティ・フォーラム」を開催した。導入事例の発表で呼ばれたのはイケア・ジャパンとドイツの運送会社大手DBシェンカーの2社。

テクノロジー 新エネルギー車
イケア・ジャパンが導入したeキャンター
  • イケア・ジャパンが導入したeキャンター
  • イケア・ジャパンが導入したeキャンター
  • リアはパワーゲートつき
  • イケア・ジャパンが導入したeキャンター
  • 充電中
  • イケア・ジャパンが導入したeキャンター
  • 出力6kWのAC普通充電器の配電盤
  • イケア・ジャパンが導入したeキャンター
三菱ふそうトラック・バス(MFTB)は15日、『eキャンター』の納入が全世界で300台に達したとして「サステナブル・モビリティ・フォーラム」を開催した。導入事例の発表で呼ばれたのはイケア・ジャパンとドイツの運送会社大手DBシェンカーの2社。

◆日本でも始まるラストマイル輸送の電動化

イケアは2025年までにラストマイル輸送(店舗・拠点から消費者宅ドアまでの配送)のすべてをゼロエミッション車に置き換える目標を掲げている。すでにアムステルダムと上海の拠点ではこれを達成している。目標は全世界のイケアで共通のものなので、日本も例外ではない。

イケア・ジャパンでは2019年に2台、翌2020年に追加で1台のeキャンター」を導入している。最初の2台のうち1台は、パートナーの配送会社に運用を任せる形で商品配送に使ってもらっている。もう1台と20年に追加された1台(計2台)は、イケア港北店の倉庫と都内店舗間の輸送に使っている。なお、イケア港北店では、eキャンター以外にも、4台の三菱『ミニキャブMiEV』をエリアの配送に活用している。

eキャンターの充電はもっぱらバックヤードの普通充電器だ。6kWのAC充電ということなので、一般家庭に取り付けるEV用コンセントと同等なものだ。配送ルートなどはほぼ決まっているので、閉店後、十分に充電時間がとれる。そのため、2年間の運用で外の急速充電器の世話になったことはほとんどないという。EVの基本的な運用は乗用車でもトラックでも普通充電・拠点充電ということだ。DBシェンカーが導入したeキャンター

◆リスボンからオスロまでEU中で走行するeキャンター

DBシェンカーはベルリンを本拠とする総合物流会社。鉄道貨物輸送の会社が母体だが、現在は航空・船舶貨物やトラック等による陸上輸送など、ロジスティクスに関するソリューションを展開するグローバル企業だ。EU圏では、南はポルトガルのリスボンからノルウェーのオスロまですべて72時間以内の輸送ネットワークを持つ。

DBシェンカーも独自のカーボンニュートラルの目標を掲げている。2030年までに、EU圏の陸上輸送と施設のCO2排出量を55%削減(2019年比)。仕様するエネルギーソースのCO2排出量を25%削減(同前)を目指す。さらに2040年にはカーボンニュートラルを達成する。

同社はすでに41台のeキャンターをEUで運行させている。用途は都市部の近距離輸送やラストマイル輸送だ。ドライバーの評判もよく、騒音や振動がすくない他、貨物を満載した状態でもディーゼルよりも扱いやすいとのことだ。燃料代やメンテナンス費などランニングコストでのメリットもでている。ビールを配送するeキャンター

◆三菱ふそうの取り組み

カーボンニュートラル・脱炭素はいまや全世界の共通認識だ。だが、その実現は簡単ではない。再生可能エネルギーや電動化などの道筋は見えているが、現実問題として石炭火力やLNGによる発電を排除しきれない国は多い。COP26の採択文書では石炭廃止を盛り込めなかった(削減までしか踏み込めなかった)。

フォーラムに参加した、三菱ふそうを含むダイムラーグループ、イケア、DBシェンカーも課題は認識しており、それぞれが掲げる目標の難しさを自覚している。三菱ふそうは、eキャンターの先行者メリットを生かし、300台出荷達成した。内訳は海外で240台。日本国内で70台となっている。今回参加したユーザー企業がeキャンターを採用したのは、小型EVトラックの信頼性や実績が理由だ。

だが、同時に選択肢が他になかったというのもある。いすゞが小型EVトラックの量産を表明したが、現在、積載量4トンクラスの小型トラックでゼロエミション(HVはゼロエミッションにならない)は、中国をのぞけばeキャンターくらいだ。そもそも、東南アジアや韓国など一部地域以外、グローバルで小型トラックの市場そのものが小さい。欧米でラストマイル輸送を担うのはバンだからだ。

キャンターの主戦場でない海外を含めて300台というのは決して小さい数字ではない。導入バリエーションも豊富で、一般的な平台やカーゴ以外に、ダンプタイプ、保冷車、パワーゲート(イケア・ジャパンの車両はこのタイプ)などもeキャンターで対応している。ハイネケンが採用したトラックは荷台に大型のビールタンクとポンプが架装されている。DBシェンカーが導入したeキャンター

◆EV運用の知見を集めてゼロエミッション車を拡大

EV(ゼロエミッション車)普及のためのエコシステム構築にも力を入れる。コネクテッド機能を利用したメンテナンスやフリート管理支援、アプリサービス。バッテリーについてはリサイクルビジネスの活用。車両のリースやサブスクリプションサービス、充電インフラの支援などで、ユーザー企業のゼロエミション化をサポートしていく。

イケア・ジャパンでは、目標達成のためには配送業者やパートナーにもゼロエミッション化を推進しなければならない。「海外はともかく、日本では末端の配送パートナーまで電動化(イケアのミッションにHVは含まれない)を広げる必要がある(イケア・ジャパン カントリーサスティナビリティマネージャー マティアス・フレデリクソン氏)。」ハードルは高いが、大手配送事業者・物流会社の認識も同じであるため、達成可能だとしている。

DBシェンカーは、「3000台のうち41台は、まだほんの一部に過ぎない。いまは会社もドライバーも学習している。EVトラックの使い方、運行管理の仕方、さまざまなデータをとってユースケースを増やしている(DBシェンカー VP シリル・ボンジャン氏)」と、段階的にゼロエミッション車を増やしていく計画を示唆した。
《中尾真二》

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